とある日の温泉にて。
のんびり浸かっていると
のぼせたらしい女の子が
限界を迎えたのか
しゃがみ込んだ。
その時、
その子の母親らしき人は
私の横にいて
大丈夫？と大声で聞くだけ。
全く動こうとしない。
名前を呼んだから
親子なのは確定なのに
何も無かったかのように
娘に背を向ける母親。
娘さんは相当辛いのか
微動だにせず声も出せないようだ。
私には衝撃だった。
そんな親がいるかよと。
見るからに小さい
小学生くらいの女の子を放っておくとは。
昔から私もすぐのぼせるから
辛さはよくわかる。
しゃがみこむほど酷い時は
目の前がぐるぐるして
立ち上がることもできず
上下も左右もわからない。
今すぐに冷やすべきだ。
さすがにそれを
何度も経験すると
多少我慢できるようになり
気合いで水風呂まで歩いたり
椅子のある所まで歩けたりする。
だがあの子はまだ無理だろう。
今ではのぼせる前兆が
なんとなくわかってきた。
危ないと感じたら
すぐに水風呂で冷やし
あがるようにしている。
それでも未だ年に1、2回はなる。
椅子の上、体育座りで瀕死の
あの時間は気分が最悪だ。
そんな、のぼせやすい私に対し
母はすぐにタオルを
冷水で濡らしてきて首元に当てる
そして
冷たいお水を買ってきてくれる。
それを見て育ってきた私としては
何もしない親は一体何……。
お節介かとも思ったが
女の子に声をかけ水を買って戻った。
女の子は真っ赤のままで
汗が止まらないようだった。
水を渡し、飲んでもらい
垂れ流しのままの汗を
なぜ拭かないのかと尋ねると
なんと、タオルを持っていなかった。
温泉でそんな馬鹿な。
非常識な親に少し
いや、かなり腹が立ったが
私はサウナ用にタオルを
2枚持っていたからあげることにした。
さすがに知らない人に
急にタオルを渡されてもキモイだろう。
しっかり聞いた上で
冷水で濡らし持っていった。
その子はその後も10分ほど
しゃがみこんでいたが
徐々に立てるようになり
『ありがとう！』と言って
あがっていった。
そんな時でも女の子の親は
そっぽを向いていて
頭に巻いてるタオルは飾りか？
なんだこいつ
と思ったのは許してほしい。
その後、帰る時間になり
支度していると
女の子が走り寄ってきて
タオルを返してくれた。
『ありがとう』
と何度もお礼を言っていた。
捨てていいと伝えたのに
礼儀正しい子のようだ。
今は子供をだしに使う
親もいると聞くし心配になってしまう。
あの子の笑顔が
曇らないことを願うばかりだ。
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